tomoki478's blog

物流時代

グリーン物流による環境物流の将来

1、はじめ
今、世界中でたくさんのモノが生産され、流通する場が増え、飛行機やトラック等交通手段の発達、サービス、インフラの充実なってきました。ところが、これらの過程で、地球温暖化、交通渋滞、大気汚染など、環境問題は増やして大きな社会問題となっています。物流において、輸送手段は欠かせないものであるが、同時に温室効果ガスの一つである二酸化炭素を排出するという側面も持っています。特に、トラック輸送の環境問題への対応は社会的責任を負った大きな課題です。2005年の京都議定書の発効を背景に、環境負荷の少ない物流システムの構築、いわゆるグリーン物流の推進が課題となっています。

2、グリーン物流の定義
 グリーン物流の定義について、国土交通省は、2006年に策定した「CSRの見地からのグリーン物流推進企業マニュアル」の中で、狭い意味と広い意味の両方の定義を紹介しています。それによると、狭い意味のグリーン物流は、京都議定書を遵守する観点から、温室効果ガス、特に二酸化炭素を低減させる物流であります。一方、広い意味のグリーン物流については、まず、「グリーン」について考えると、対象とするものは、何も二酸化炭素(CO2)だけではなく、窒素酸化物(NOX)、硫黄酸化物(SOX)も対象となるべきだし、粒子状物質(PM)も対象となるべきです。また、「物流」に関して考えると、単に「物を運ぶ」という行為についてのみに着目せずに、「物流」を「物を運ぶ」システム全体として捉え、組織的な対応や、人材の育成、事業所内での取り組みや、地域社会との共生をも対象とすべきです。

3、グリーンロジスティクス
物流にともなう環境負荷を低減するため、グリーンロジスティクスを推進しています。グリーンロジスティクスとは、調達、生産、流通、使用・消費、回収・再生資源化という製品・サービスの供給活動の全工程(サプライチェーン)で発生する環境負荷を、可能な限りコスト・効率を犠牲にすることなく減少させる物流体系を指します。
グリーンロジスティクスの具体的な取り組み分野は、①省エネ・CO2 排出削減、②資源循環推進があり、前者を実現する手段は、(i)燃費・CO2 排出原単位改善、(ii)走行距離削減、(iii)積載率向上となる。上記②を実現するためには、リデュース・リユース・リサイクルの3R の手法を活用することになにます。
燃料費を改善すするために、燃料ロスを防ぐ運転方法である「エコドライブ」を普及しています。「エコドライブ」とはアイドリングをしない、急な発進・加速・減速をしない、無駄な荷物を積まないなどを実行することにより、消費燃料を節約し、二酸化炭素の排出を削減するため、運転の工夫で燃費を改善しようとするものです。大きな設備投資を必要とせず、一人ひとりのドライバーの心がけだけで、燃費とコストを改善できる優れた取組みといえます。
企業物流の地球温暖化対策は、トラック輸送に焦点をあてる必要があるゆえんです。距離が短縮できれば、使用する燃料が減り、CO2も減ります長距離輸送の場合は、鉄道や船など燃費のよい輸送方法への転換も有効です。トラックから別の輸送方法(モード)へ変えるという意味から、「モーダルシフト」と呼ばれています。トラックから船に変えればCO2は1/4 に、鉄道にすれば1/8まで減らせます。また、モーダルシフトすれば、輸送距離が長くなるほど、トラック輸送よりもコストが安価になり、とくに輸送距離が500kmを越えると、かなり有利になります。
交通問題の視点から都市内物流を考えれば、りデュースの視点から環境対策を考えることになります。すなわち、物量そのものを削減できなくとも、渋滞に悪影響を与える駐車台数の削減、物流車の走行距離の短縮と積載率の向上が実現できれば、輸配送する物流車の台数や台キロやトンキロの削減が可能となり、環境対策につながります。
以上を踏まえるとグリーンロジスティクスは、これまで企業経営に浸透してきた物流部門のアウトソーシングである3PL(Third Party Logistics)の中で大規模に拡大していく可能性があります。3PL は単に物流サービスを提供するだけではなく、企業の物流業務全体もしくはかなりの部分を受託することになるため、環境負荷低減の観点から物流ネットワークの大規模な改革が可能であります。例えば、広範囲な物流拠点統合や他企業との物流共同化による大幅なCO2 削減などを実行しやすいと考えられます。

4、グリーン物流の取り組み
 グリーン物流は物流効率化の一類型と解されるため、企業のコスト削減につながるものも多数見受けられます。グリーン物流を進める上では、荷主企業の役割は重要であり、荷主企業や物流事業者のグリーン物流に関する行為に対する評価の観点から、金融機関の取り組みも重要であると考えます。

4.1、荷主企業の取り組み
荷主企業では、グリーン物流に対する取り組みを、ものづくりの段階から意識して行うことが可能でありその効果は大きいと言えます。荷主企業独自の取り組みとしては、以下のようなものがあります。
(1) グリーン調達
グリーン調達とは、企業などが製品の原材料・部品や事業活動に必要な資材やサービスなどを、部品メーカーなどのサプライヤーから調達するとき、環境への負担が少ないものから優先的に選択しようとすることです。これにより、供給側に環境負荷の少ない製品の開発を促すことにつながり、経済活動全体を変える可能性があります。環境マネジメントの規格であるISO14001の認証を取得した企業から優先して調達することを指すケースもあります。
●ソニーのグリーン調達
ソニーは、製品に搭載する原材料・部品については、2003年4月以降、ソニーがグリーンパートナーとして認定したサプライヤー様からのみ調達しています。グリーンパートナー認定は、サプライヤー様の開始・継続の前提です。認定後も2年毎に更新してもらいます。オフィス・事務用品などの調達にあたって、環境に配慮した製品(エコ商品)を優先的に選択します。ソニーグループでは、地域ごとに、オフィス・事務用品などの調達システムを共通化しています。このシステムには、多くの購入推奨品をカタログ化し、その中から調達する仕組みがあります。2006年9月時点で、日本では、このカタログの中に、「エコ商品」を約8,200点掲載し、グリーン調達を加速しています。
(2) 物流事業者のグリーン物流への理解
物流事業者のグリーン物流を促進するため、荷主企業が CSR の観点から物流事業者が行うグリーン物流について理解を示し、積極的にパートナーシップを組むことが重要であります。こういった取り組みは、環境負荷低減の実現の他に、自社の物流コスト削減の取り組みにもなるものであります。
(3) 商品のコンパクト化
商品の製造段階から物流を意識して、商品のコンパクト化を行うことで重量や荷姿を小さくし物流量の減量化を図ることが可能であります。
花王製品のコンパクト化
花王では、製品の性能を高めてコンパクト化することで、1回当たりの使用量を減らし、原材料、エネルギーの消費、使用後のごみの量を少なくしています。こうしたコンパクト化製品の代表が、1987年に発売した衣料用粉末洗剤の「アタック」です。いまやコンパクト洗剤は一般的になりましたが、現在の洗剤は、コンパクト化以前の洗剤と比べて、製品の重量で50%、箱の体積で70%削減されています(1回使用当たり)。2009年8月には、花王の従来の衣料用液体洗剤の濃度を2.5倍に高めた、衣料用超コンパクト液体洗剤「アタックNeo」を発売しました。濃縮化によって製品の重量を削減し、容器の体積も小さくできるため、輸送時のCO2の削減にもつながります。「アタックNeo」は従来の液体洗剤「アタック バイオジェル」に比べ商品重量で58%、容器の体積で60%削減されています。さらに「アタックNeo」は、新活性剤成分「アクアWライザー」配合技術により、すすぎが1回で済み、コンパクト化による環境負荷低減だけでなく、節水、節電によりご家庭での使用時のCO2排出削減にも貢献しています。

(4)荷主企業としてのCO2 削減計画の策定
企業全体の事業活動を通した CO2 排出量を見直し、数値目標を立てて削減に向けたアクションプランを実行することで確実な排出削減を実現することとなります。荷主企業では、物流だけではなく生産や販売の中でもCO2排出量を削減する取り組みが多くあり、これらを踏まえた計画を策定することが大きな効果を得ることとなります。
(5)荷主企業主導型による共同輸配送
商品特性として、温度帯などの輸送条件が他と異なる商品を製造するメーカーに有用な取り組みであります。工場⇔卸間の配送を共同化することにより、物流コストが削減できるだけでなく、環境負荷低減にもつながります。荷主企業が進める共同配送では、近年の特徴として、特に業界全体としての取り組みが目立ています。なかでも、菓子や紙文具業界、化粧品メーカーなどの共同配送は順調に拡大しています。また、多頻度小口配送、チルド・冷蔵などの定温配送など高品質の物流サービスが求められる分野においても共同配送が進められています。大手コンビ二エスストアでは、チルド・冷蔵などの定温食品の共同配送をすでに実施していますが、近年は日用雑貨、菓子といった常温帯での共同配送への取り組みが進んでいます。共同配送によって配送効率を高め、物流コストの削減を図ると同時に、環境負荷軽減への寄与を消費者に訴えています。いずれにしても個別企業における物流効率化の限界が、共同配送に踏み切る要因となっているものと考えられますが、今後は共同化の阻害要因となる商慣行、同業他社間の競争意識、システムの違いなどを乗り越え、さらに拡大していくであろう。

4.2、物流事業者の取り組み
物流事業者にとっては、「安全・安心」「環境」に配慮した取り組み自体がグリーン物流でありCSR を果たすことにつながります。物流事業者が事業活動を通じて取り組むことができるグリーン物流には、主に以下のようなものであります。
(1) 共同輸配送
複数のトラックを使って輸配送していたものを、一台のトラックにまとめて輸配送することにより、走行車両の台数削減につながり、温室効果ガス削減が図られ、環境負荷低減となります。これは、環境負荷低減の効果だけではなく、効率的な輸配送が実現されることから、企業のコスト削減にもつながる取り組みとなります。この共同輸配送の実現には、難易度のばらつきがあり、幹線輸送であればその実現は比較的容易であるが、消費者物流ではお届け時間の制約が厳しいため難易度が高くなります。
物流事業者の取り組みを見ると、九州全域での共同配送を行う協同組合のスカイネット物流、中四国地区の物流事業者で構成する企業集合体SOFTなど、中小物流事業者がグループ化して共同配送を行います。また、保冷医薬品分野で、北海道から九州までの全国にいたる共同輸配送ネットワークを築いている中央運輸(株)のように、専門分野に特化して共同配送へ取り組んでいます。これまで、物流事業者の共同配送への取り組みは必ずしも積極的でなく、また、異業種間を対象としたほうが共同化しやすく、そこに物流事業者の役割があると考えられてきた。
 ●東芝物流における共同配送
 東芝物流として共同配送として、他の電機物流子会社との幹線輸送における往復配送(ピンポイントの郵送)、地域における共同配送(面的な配送)を推進してきました。
 a 往復配送(ピンポイントの輸送)
 幹線輸送においては、往復配送により車両台数を削減し、配送コストの低減ならびに環境負荷の低減を図っています。
 往復配送の例として東芝物流とソニーサプライチェーンりゅ―ション(株)(以下、ソニーサプライチェーンりゅ―ション)で行っている共同配送について紹介する。往復共配について紹介する。往復共配は、東芝物流関西支店とソニーサプライチェーンりゅ―ション川崎間で2000年10月より実施されており、輸送する商品は、東芝物流は冷蔵庫、ソニーサプライチェーンりゅ―ション川崎は輸入テレビ、パソコンなどとなっています。具体的な輸送ルートは、東京―大阪間の輸送にJRコンテナを採用することで、環境問題にさらに配慮した形となっています。また、コンテナの側面に、それぞれ両者のロゴをいれることで、間接的環境への取り組みをPRしていることも興味深いです このような幹線共同輸送は、複数の電機物流会社間ですでに十数ルートが全国規模で行われており、今後も順次拡大する方向にあります。
 b 地域における共同配送(面的な配送)
 次に、地域における共同配送例として、東芝物流と(株)日立物流(以下、日立物流)が北陸地方で行っている共同配送について紹介します。
 図表1-3に、東芝物流と日立物流がおこなっている共同配送体制を示します。配送エリアは、富山、石川、福井の北陸であります。従来、東芝物流は、石川県内の拠点より、また日立物流は富山県ならびに愛知県の拠点より、それぞれ1次幹線配送、および各県は東芝がそれぞれ2次配送を担当し、相手先の家電商品を受託し配送を行っています。なお、福井県は外注先ターミナルに両社が1次幹線配送後、それぞれ各社が2次配送を行っています。共同配送を行った結果、車両削減効果として、1次幹線配送で以下が得られている。
 【車両削減効果】
 富山県(日立物流):   ▲2車
 石川県(東芝物流):   ▲2車
福井県(各社個別運営): ▲2車
         計 6車両 削減

図表1-3
(2) モーダルシフト
モーダルシフトは、幹線貨物輸送をトラックから鉄道や海運に転換することで、環境負荷をより小さくする輸送手段であります。モーダルシフトを推進するため、鉄道においては、より使いやすい貨物輸送の提供やお試しキャンペーンを実施するなどの取り組みを行っています。国内の貨物輸送をトラックから大量輸送機関である鉄道や船などに転換します。
日立物流モーダルシフト
日立物流は、企業の物流業務を一括して受託する3PL事業を中心に事業規模を拡大し、現在では、日立グループ以外の企業からの売り上げが60%を超えるまでになりました。当社では、幹線貨物輸送を機動力のあるトラックから、省エネ・低公害で大量輸送に優れた鉄道や船舶に切り替える「モーダルシフト」を推進しています。トラック輸送と上手に組み合わせることにより、輸送の効率化、物流コストの削減を図ると同時に、CO2排出量の削減、交通渋滞の緩和に努めています。モーダルシフトのほかにも、3PL拡大による更なる物流の効率化やアイドリングストップなどの省エネ運転、ハイブリッドトラックなど低公害・低燃費車の導入などを積極的に行い、荷主から選ばれる物流企業をめざしています。
(3) 荷主への働きかけ
環境にやさしい物流システムの構築は、荷主企業の協力があって初めて実現できる場合も多く、物流事業者側から荷主企業に対するそうした働きかけを行うことも一つの大きな取り組みであります。
(4) 低公害車の導入
現在、物流の手段として最も活躍しているのがトラックなどの運搬車であり、毎日たくさんの運搬車が日本中を走り回って物流の流れを形成しています。しかし、その反面では排気ガスの流出による環境破壊が起こっています。今、多くの企業ではこのような公害を減らすためにさまざまな取り組みをしています。その一つに低公害車の利用を促進する取り組みがあり、たくさんの企業がこの低公害車の開発に取り掛かっています。物流事業者の商売道具であるトラックに、天然ガス自動車CNG 車)、ハイブリッド自動車等の二酸化炭素や有害物質の排出を抑えた車両を導入します。日々走行する車両の環境負荷低減を図ることが可能となります。2003年10月から東京都など地方自治体が旧式のディーゼル車の走行規制を導入するなど、ディーゼル排ガス規制も強化され世間的にも低公害車が注目されてきています。
●セブン‐イレブン低公害車の導入
セブン‐イレブンは低公害車としての効果が高い天然ガス自動車の導入を拡大しています。1998年より導入している天然ガス自動車は、光化学スモッグ酸性雨の原因となる窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)の排出が少なく、硫黄酸化物(SOx)を全く排出しません。しかし、天然ガススタンドが少なかったり、充填1回あたりの配送距離が短いなど、導入できる地区は限られているため、可能な地区で導入を進めています(図表1-4)
(5) デジタル式タコグラフの導入
デジタコは、ドライバーの運転が記録されるものであり、速度や急加速、急減速、アイドリングがチェックされます。この導入により、ドライバー一人一人が環境にやさしい運転を意識するようになり、また安全運転にも寄与するものであります。環境にやさしい安全な運転は、燃費向上も図られることから、燃料消費量の削減につながり、企業のコスト削減にもつながります。
(6) 物流拠点の整理合理化
環境負荷低減を目指し、効率的な物流システムを構築するために、物流拠点の見直しを図り、分散した拠点を集約する等することで、無駄な走行を減らし、CO2 排出量を削減できます。これは、企業のコスト削減にもつながるものであります。
(7) サード・パーティー・ロジスティクス3PL)による合理化
3PL は、荷主企業から物流を一貫して請負い高品質なサービスを提供する。荷主企業は、物流コストの削減や環境負荷の低減を図ることを目的に、物流を3PL 事業者にアウトソーシングすることが近年多くなっています。
(8) エコ包装
商品や荷物の梱包は、大量の紙等を用い資源の無駄遣い、ゴミ増量の要因となっています。また、梱包資材は作る際にも再生・破棄する際にもCO2 を排出しています。梱包資材の再資源化や過剰包装を行わないことにより、ゴミの減量化、資源の有効利用を図ることが可能となり、環境対策の重要な取り組みと言えます。
●リコーグループによる循環型エコ包装
リコーでは、1994年にダンボール資源を節約した「エコ包装」を導入するなど、包装材の削減に積極的に取り組んできました。2001年には、何度も繰り返し使える樹脂製の包装材「循環型エコ包装」を初めて市場に投入しました。2010年度では、日本国内で出荷された複写機の約70%、全68機種中48機種に「循環型エコ包装」を利用しています。このほか、キズ防止用のラップのみを使った簡易包装で、製品を工場からお客様に直接お届けする活動も行っています。この簡易包装は、高速機などの一部の機種にされており、1台あたりの包装材質量を100kg以上削減することが可能となることから、順次適用地域を拡大する活動を展開しています。これらの取り組みによる包装材の削減効果は、年間約1280トンで、CO2に換算すると約1,680トンになります。
(9)輸配送システムの導入
 求車・求貨システム(QTIS)や配車支援システム等を導入・活用することは、帰り荷の確保や積載率の向上、車両稼動率の向上など、輸送効率向上が見込まれる取り組みであります。環境の観点からは、空走などの無駄を省くことができ、環境負荷低減を図れるだけでなく、同時にこれは、企業のコスト削減あるいは売上増加につながります。
 ●求車・求貨システムの導入による環境負荷の低減
 QTIS(求貨求車情報システム)の確立により、輸送車両1台あたりの積載率を向上させ、輸送貨物1トンあたりのCO2排出量を47.3kgから42kgに、11.2%低減しました。この取り組みの結果、年間約6,490トン(2001年比)のCO2を削減しました。輸送車両に換算すると、年間約17,700台の削減に相当します。今後もさらなる輸送の効率化に向けて取り組んでいきます。

  この上のデータをみると、やはり求車求貨システムの普及は、環境負荷低減に向けた取り組みとして見た場合、非常に重要な活動であるといえます。しかしながら、昨今の求車求貨システム・ブームが去った後の状況を考えると、まず第1に、企業あるいは協同組合自体がビジネスモデルとして成り立つ仕組みを確立できるかにかかっています。ネット・オークションによる「オープン型」のシステムでは多少無理があるため、基本的には「クローズ型」の求車求貨システムに、配車計画システムを組み合わせるなどの試みによる普及が今後考えられます。
(10)顧客との環境コミュニケーションの実践
環境に配慮して製造した商品であることの表示や、環境に配慮した物流で運ばれた商品・荷物であることの表示を行うことは、顧客に対するアピールであり、また顧客がそういった商品を選択する機会を提供する取り組みであります。
このほかのグリーン物流の取り組みには、会社組織によるものとして、(1) ISOなどの認証取得、(2) 戦略や計画の策定、(3) 環境・CSR報告書の作成、(4) 温室効果ガス排出量の常時監視、(5) 法令の遵守などがある。また、事業所内での取り組みとして、(1) ゴミの分別、リサイクル、減量化など3Rの推進、(2) 再資源化の促進、(3) 省エネルギー、(4) 社内コミュニケーションの活用などが、人材育成面では、(1) 省エネや安全運転の指導、(2) 環境教育などがあります。さらに、地域社会における取り組みとして、(1) 清掃活動、(2) 事業所の緑化や植林、(3) 環境教育などを行っている企業もあります。
今後、物流事業者だけでなく、さまざまな分野の事業者にグリーン物流の取り組みが広がっていくことが期待されます。また、大手物流会社だけでなく、中小の運送業者へいかに普及させるかが課題です。

4.3金融機関の取り組み
金融機関等における取り組みは以下のものでああります。
(1) 環境配慮経営を行う企業への低利融資
環境配慮経営を行う企業への低利融資とは、環境格付けを実施し、格付け結果に基づいた低利融資を実施する(金融のグリーン化)ものであります。
(2) エコファンドなどのSRI の進展
CSR を実践している企業をSRI(社会的責任投資)を通じて評価する動きの一つとして、エコファンド(環境経営推進企業を構成銘柄とする投資信託の新商品)があります。
(3) 環境格付けに当っての物流面での取り組み評価
CSR を積極的に実践している企業を評価する取り組みとして、有力メディアによる評価も忘れてはなりません。

5、グリーン物流から生み出すニュービジネス
 グリーン物流は、ロジスティクスの過程における環境汚染、環境負荷の低減を目指し、「低炭素社会」、「循環型社会」の構築に向けて、環境や社会への取り組みを行うことに伴い、新たなビジネスを生み出すことができればベストです。
 今日の私たちの生活は、家庭を例にとれば、冷暖房や、給湯、調理、洗濯など、どれひとつ取っても、電気やガスなど何らかのエネルギー消費抜きには成り立たなくなっている。テレビやパソコンを使ったり、外出する際には自動車や電車に乗ったりと、省エネに努めてもどうしても減らせないCO2排出量がある。企業活動においても事情は同じである。この温室効果である二酸化炭素の排出を相殺するカーボンオフセットというビジネスチャンスは現在の社会に生み出しました。カーボン・オフセットとは、自分や自社が排出しているCO2のうち、どうしても削減できない排出量(の全部または一部)を、他の場所での排出削減・吸収活動に資金を提供したりすることによって、埋め合わせようという取組みであります。市場では、二酸化炭素やフロンなどの温室効果ガスが取引ができます。2005年に排出権取引市場を創設する方針を固めています。割り当ての範囲内に排出量を抑えられる企業などが排出権取引市場で余った分の権利を売り、反対に割り当ての範囲以上に排出しなければならない企業などが、その権利を買う取引のことができます。
 カーボン・オフセットというビジネスチャンスとともににグリーン物流を推進することで、付加価値を生み出すことが可能です。グリーン物流と企業戦略が良いサイクルをつくり、お互いが相乗効果を生み出せるようにする工夫が大切なのです。

6、まとめ
 グリーン物流は環境にやさしい物流システムのことであります。共同輸配送、モーダルシフト低公害車やデジタル式タコグラフの導入、輸配送システムの構築など、さまざまな手法があります。また、組織運営や人材育成、地域貢献などにおける取り組みも、広い意味のグリーン物流に含まれます。グリーン物流は、CO2や大気汚染物質の排出削減などの環境負荷低減効果だけでなく、輸配送の効率化によるコスト削減につながることや、企業の社会的責任(CSR)が普及していることなどを受けて、率先して取り組む事業者が増えています。2004年には、グリーン物流パートナーシップ会議が発足しました。関係機関による支援や補助制度もあります。グリーンロジスティクスとは、地球環境に優しいロジスティクスの意味で、 トラック等のCO2やNOx、SPM(浮遊粒子物質)の規制、騒音規制を始め、容器包装のリサイクル、 資源化可能の使用済み機器・部品のリサイクルなどを徹底するソーシャルロジスティクスの考え方であります。また、社会への貢献を最重要課題とし、物流資源を有効に活用して低コストでその目的の実現を図る戦略で、 共同化(アライアンス)もその有効な手法であります。